高校の校舎

DXハイスクールとは?補助金条件・具体的事例まで解説

2024年度から本格的に運用を始めた「DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)」は、全国の高校にデジタル教育を浸透させ、次世代の人材育成を加速するための文部科学省の取り組みです。

都市部だけでなく地方・小規模校も対象となり、ICT環境の整備や情報Ⅱの必修化を通じて、教育格差をなくす動きが全国に広がっています。

本記事では、DXハイスクールの制度の概要や予算と条件、採択校一覧、先進的な事例、よくある疑問まで網羅的に解説します。

DXハイスクールが高校教育にもたらす変化を理解し、今後の教育や人材育成を考えるヒントにしてください。

DXハイスクールとは

学校の図書室

DXハイスクールとは、文部科学省が推進する「高等学校DX加速化推進事業(通称:DXハイスクール)」を指します。

高校段階でのデジタル教育を強化し、次世代のデジタル人材を育成することを目的とした施策です。

文部科学省におけるDXハイスクールは以下の制度とされています。

高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)では、情報、数学等の教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、ICTを活用した文理横断的な探究的な学びを強化する学校などに対して、そうした取組に必要な環境整備の経費を支援します。
引用:令和7年度 高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール):文部科学省

情報科目の充実、ICT機器やネットワーク環境の整備、探究学習や産学連携による実践的な学びを通して、全国の高校生がデジタル社会に対応できる力を育むことを目指している制度です。

スーパーサイエンスハイスクールとの違い

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)は、2002年度から文部科学省が指定している制度で、理数系教育や科学研究を重点的に行う高校を対象としています。

全国230校の指定校は大学や研究機関と連携し、先端的な科学研究や探究型学習を進めることが特徴です。

スーパーサイエンスハイスクールとDXハイスクールとの違いは、分野の限定性にあります。

DXハイスクールでは、理数分野に限定せず、情報教育やICT活用を幅広い教科に組み込み、デジタルを横断的に活用できる力を育成します。

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)では、理数に重点を置いたカリキュラムや課題研究や探究的な学習活動がメインとなっています。

リーディングDXスクールとの違い

「リーディングDXスクール」は、経済産業省や文部科学省が進める先進的なDX教育の取り組み・事業を指します。

文部科学省では、以下の事業と定めています。

リーディングDXスクール事業は、GIGAスクールの標準仕様に含まれている汎用的なソフトウェアとクラウド環境を十全に活用し、児童生徒の情報活用能力の向上を図りつつ、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実や校務DXを行い、全国に事例を展開する事業です。
引用:リーディングDXスクール事業に関すること:文部科学省

小中高校を中心に、AI・データサイエンス教育を先導的に実施するプログラムが多く、一部の高校でも採択例があります。

DXハイスクールが「高校段階におけるデジタル教育」を狙う事業であるのに対し、リーディングDXスクールは「小中高の子供のデジタル化を加速させること」を主眼とする事業である点で役割が異なります。

DXハイスクールの予算

女子高生と先生

DXハイスクール事業の補助額は、採択区分や重点類型かどうかによって異なります。

2025年度(令和7年度)の予算は以下のとおりです。

  • 継続校:500万円/校
  • 重点類型の継続校:700万円/校
  • 新規採択校:1,000万円/校
  • 重点類型の新規校:1,200万円/校
  • 都道府県による域内横断的な取組:1,000万円

出典:令和7年度 高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール):文部科学省

新規で採択される学校や重点類型に指定された学校ほど、より手厚い支援を受けられる仕組みになっています。

補助対象経費

補助金の対象となる経費は、デジタル教育の環境整備や学習活動に直結するものに限られています。

具体的には以下のような費用が対象です。

  • 設備備品費(ICT機器や関連機材など)
  • 委託費
  • 雑役務費・消耗品費
  • 人件費(報酬・給料・職員手当等。ただし通常の教職員の給与等は除外)
  • 諸謝金・旅費
  • 借損料・印刷製本費・会議費・通信運搬費・保険料

出典:令和7年度 高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール):文部科学省

教職員の通常の給与や通常の学校運営にかかる経費は補助対象外となっています。

DXハイスクールの目的・狙い

高校の校舎

DXハイスクールは、全国の高校においてデジタル教育を加速させ、未来の社会を支える人材を育成するための国家プロジェクトです。

目的は大きく3つに整理できます。

  • デジタル人材育成と情報活用能力の強化
  • 地域格差の是正と教育環境の均一化
  • 産学連携・課題解決型学習を通じた社会接続

デジタル人材育成と情報活用能力の強化

中心となるのは「情報Ⅱ」を必修化した教育の推進です。

2025年度の時点で842校が開設済みであり、履修率は38.0%に達しています。文部科学省はこれを2027年度までに63.2%へ引き上げることを目標に掲げています。

また、数学Ⅱ・Bや数学Ⅲ・Cの履修推進も位置づけられており、情報科と理数系科目を横断したカリキュラムを強化しています。

こうした取り組みを通じて、生徒が「順序立てて考える」「問題を発見し解決策を導く」能力を実践的に身につけることが狙いです。

地域格差の是正と教育環境の均一化

補助金制度(新規採択校1,000万円/継続校500万円/重点類型校は上乗せ)により、都市部に限らず地方や小規模校でもICT機材や高速通信環境を整備できる体制が整いました。

地域格差に左右されず全国どこでも探究学習やデータ活用教育を実施できるようになり、教育環境の均一化が進められています。

産学連携・課題解決型学習を通じた社会接続

DXハイスクールは、PBL(Project Based Learning:課題解決型学習)の導入を通じて、生徒が企業や大学と連携して実社会の課題に取り組む学習を推進しています。

文部科学省は、この取り組みを通じて大学理系学部への進学率を現状の40%前後から2032年頃までに50%程度へ引き上げる目標を掲げています。

地域産業や大学研究との接続を強めるとともに、生徒を将来の社会や産業の即戦力人材として育成することを意味しています。

出典:教育未来創造会議「第一次提言」を受けたこれからの大学について(進学者のニーズや人材需要に対応するための学部再編と理系女子学生の活躍促進について)

DXハイスクールに採択された指定校

女子高生

令和7年度(2025年度)のDXハイスクール採択結果によると、全国1,642校が申請を行い、そのうち1,191校が採択されました。

採択率は99.7%と高い水準で、全国的に制度が広がっていることがわかります。

内訳を見ると、公立871校、私立320校で、継続採択校が978校、新規採択校が213校となっています。

さらに、重点類型(グローバル型・特色化/魅力化型・プロフェッショナル型)に指定された学校も計80校含まれており、先導的な取り組みを担うことが期待されています。

採択校の内訳(令和7年度)

区分 公立 私立 合計
継続採択校 730校 248校 978校
新規採択校 141校 72校 213校
合計 871校 320校 1,191校

重点類型校の内訳

類型 採択校数
グローバル型 20校
特色化・魅力化型 10校
プロフェッショナル型 50校
合計 80校

DXハイスクールの補助を受けるための条件

パソコンを触る女子高生

DXハイスクールとして採択され、補助を受けるためには、単なるICT機材の導入だけではなく、カリキュラム・環境・成果目標までを含めた教育計画が求められます。

ここではその具体的な条件を整理します。

情報Ⅱ等の教科・科目の開設等

補助を受ける学校の大前提は、情報Ⅱや数学ⅡB・数学ⅢCといった科目の開設と履修推進です。

基本類型・重点類型共通で採択校に求める具体的な取り組み例は以下の通りです。

項目 内容
情報Ⅱ・数学ⅡB・数学ⅢCの履修推進 遠隔授業の活用を含む
学科・コース設置 情報・数学を重視した学科への転換、コース設置
文理横断的・探究的な学び デジタルを活用した横断的学習や探究型学習
デジタル課外活動 生徒の興味関心を高めるデジタル課外活動の促進
高大接続 高大接続の強化や多面的な高校入試の実施
地方・小規模校での理数科目開設 数学Ⅲ等を遠隔授業で実施
専門高校の高度化 スマート農業・インフラDX・医療・介護DX等に対応した専門科目指導、高大接続強化

出典:高等学校 DX加速化推進事業(DXハイスクール)

2025年度時点では、採択校のうち842校が情報Ⅱを開設しています。

文部科学省は、継続校は2026年度までに、新規採択校は2027年度までに、履修率を63.2%まで引き上げることを目標に掲げています。

この履修推進は、将来的なAI・データサイエンス教育を支える基盤づくりと位置づけられています。

デジタル環境の整備と教育内容の充実

補助対象経費を活用し、ICT機材やネットワーク環境、ソフトウェアを含むデジタル基盤の整備が必須です。

具体的には以下のような取り組みが例示されています。

項目 内容
ICT機器整備 ハイスペックPC、3Dプリンタ、動画・画像生成ソフト等
遠隔授業用機器 通信機器整備を含む
理数教育設備 理数教育設備整備
専門高校向け設備 高度な実習設備整備
人材派遣 専門人材派遣等業務委託費

出典:高等学校 DX加速化推進事業(DXハイスクール)

ハード面の整備に加えて、探究学習やPBL(課題解決型学習)の充実、教員の指導力強化も条件に含まれています。

重点類型の必須要件

さらに、グローバル型・特色化・魅力化型・プロフェッショナル型といった重点類型校に指定されます。

それぞれの重点類型の概要は以下のとおりです。

類型 概要
グローバル型 国際的に活躍できるデジタル人材育成を目的とする
特色化・魅力化型 地域や学校の独自性を活かして魅力ある教育を展開
プロフェッショナル型 産業界と連携し、専門分野で即戦力となる人材を育成

 

重点類型通常では、以下のような取り組み事例が求められます。

採択校に求める具体的な取り組み例(重点類型:グローバル型・特色化/魅力化型・プロフェッショナル型)

項目 内容
国際連携 海外の連携校等への留学、外国人生徒の受入、外国語による授業、国内外大学との連携
普通科の転換 文理横断的な学びに重点を置いた新しい普通科への転換
産業界との連携 最先端の職業人材育成の取組実施

出典:高等学校 DX加速化推進事業(DXハイスクール)

上記には、半導体重点枠も含まれます。

必須要件を満たすことで、重点的に予算が上乗せされ、より高度な教育活動を展開できる仕組みになっています。

DXハイスクールの取り組み事例

机と椅子、計算機

全国のDXハイスクールでは、情報Ⅱを活用した実践的な授業や、地域全体でのネットワーク構築など、多様な取り組みが展開されています。

ここでは代表的な事例を紹介します。

東京都立小岩高校:情報Ⅱを活用したプロジェクトベース学習の導入

東京都立小岩高校では、情報Ⅱを活用したプロジェクトベース学習(PBL)を導入しています。

生徒自身がテーマを設定し、プログラミングやデータ分析のプロセスを担いました。

採択校の生徒は、情報活用能力等の伸びにあり、単なる座学ではなく実践的な学びが成果につながっていることが確認されています。制度の後押しによって、授業の形が変わってきた事例です。

千代田区立九段中等教育学校:情報技術で「価値創造」探究型授業を展開

千代田区立九段中等教育学校では、「情報技術を活用して価値を創造する」をテーマにした探究型授業を展開しています。

生徒は社会課題を自ら設定し、情報技術を活用して解決策を設計し、最終的に成果を発表します。

また、企業や大学との協働を積極的に取り入れており、学校内の学びにとどまらず社会との接続を意識したカリキュラムになっている点が特徴です。

山形県21校による「山形モデル」:県域横断的に連携

山形県では21校が県域横断的に連携して、DXハイスクールに取り組んでいます。

デジタルハリウッド大学など外部機関が伴走支援し、以下のような取り組みが行われています。

  • 教員向け研修:生成AIやデータサイエンスに関する最新テーマを扱い、指導力を強化
  • 生徒向け講座:実践的なプログラミングや探究活動を集中キャンプ形式で実施

このように県全体で取り組む山形モデルとして学校単位では実現しにくい教育資源の共有や学習環境の整備を進めています。

DXハイスクールに関するよくある疑問

教育DXとは何ですか?

教育DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、教育分野においてデジタル技術を活用し、学習・指導・校務の在り方を変革することを指します。

教育DXの目的には、学びの質を変えることが挙げられます。

GIGAスクール構想による「1人1台端末」の整備があり、その基盤の上で高校段階から「探究学習」「STEAM教育」「情報Ⅱ」などを本格的に導入することで、教育DXが期待されています。

デジタル人材の定義は?

文部科学省や経済産業省は、デジタル人材を「デジタル技術を活用して新しい価値を創造し、社会課題を解決できる人材」と定義しています。

高校段階におけるDXハイスクールでは、特に以下の力が重視されています。

  • 基礎的スキル:情報Ⅱや数学ⅡB・ⅢCをの履修を通じてプログラミング・データ分析・AIリテラシーなどを養う
  • 実践的能力:主体性・協働性・課題解決力を身につける

単にITに詳しい人材を育てるのではなく、デジタルを使って価値を生み出せる人材を目指しています。

DXハイスクールはいつから?

DXハイスクール制度は、令和5年度(2023年度)に初めて募集が行われ、令和6年度(2024年度)から本格的に実施されています。

初年度から全国で多数の高校が採択され、2025年度(令和7年度)には申請1,642校のうち1,191校が指定されました。

DXハイスクールでデジタル人材の不足を解消

日本社会ではAI・データサイエンス分野を中心にデジタル人材の不足が深刻化しています。

DXハイスクールは、高校段階から体系的にデジタル教育を行うことで、将来の人材の裾野を広げることを狙っています。

DXハイスクールは教育の充実と社会接続を通じて、今後の長期的な人材不足の解消に貢献できるでしょう。

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