小学校のSTEAM教育とは?具体事例・導入するメリット・課題を紹介

近年、注目を集めている「STEAM教育」とは、科学・技術・工学・芸術・数学の5分野を横断的に学ぶことで、子どもの「考える力」や「創造力」「問題解決力」を育む教育スタイルです。

日本でも2023年に文部科学省が掲げた教育振興基本計画により、全国の小学校で本格的な導入が進んでいます。

一方で、「どんな教材を選べばいいの?」「自宅でもできるの?」「実際にどんな授業が行われているの?」といった疑問を持つ保護者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、小学校や自宅でのSTEAM教育の実態やポイントをわかりやすく解説していきます。

家庭でも無理なく始められるSTEAM教育を知ることで、子どもの未来に繋がる学びの第一歩を踏み出してみましょう。

小学校で取り入れられているSTEAM教育とは

STEAM教育とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)の5分野を横断的に学ぶ教育手法です。

知識の詰め込みではなく、「自ら課題を見つけて考え、試行錯誤しながら解決する力」を育むことが目的です。

文部科学省のSTEAM教育等の教科等横断的な学習の推進についてにある「教育再⽣実⾏会議第11次提⾔」では以下のように定義されていました。

教育再⽣実⾏会議第11次提⾔において,幅広い分野で新しい価値を提供できる⼈材を養成することができるよう,新学習指導要領において充実されたプログラミングやデータサイエンスに関する教育,統計教育に加え,STEAM教育の推進が提⾔された。⾼等学校改⾰を取り上げた本提⾔において,STEAM教育は「各教科での学習を実社会での問題発⾒・解決にいかしていくための教科横断的な教育」とされている。

引用:STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について|文部科学省について

現代社会は変化が激しく、答えが一つではない問題が数多く存在するため、こうした柔軟で創造的な思考力・問題解決力が求められています。

STEAM教育は、これからの時代を生き抜くための土台となる力を、実体験や対話を通じて育む重要な取り組みです。

小学校でのSTEAM教育の現状

文部科学省が2023年に閣議決定した第4期教育振興基本計画では、「探究・STEAM教育の充実」が重要項目として明記されています。

そのため、全国の小学校では「総合的な学習の時間」や「理科」「生活」「図画工作」など、複数の教科を組み合わせた形でSTEAM教育が推進されています。

たとえば、自然観察を通して科学とアートを融合した表現活動を行ったり、プログラミングと算数を組み合わせてロボットを動かす授業など、教科をまたいだ実践が進んでいます。

日本のSTEAMと世界のSTEAM教育の違い

日本のSTEAM教育は、主に既存の教科に横断的な要素を加える形で実践されており、「総合的な学習の時間」に集約されやすい傾向があります。

個別教科での扱いが中心のため、体系的なSTEAM教育カリキュラムとしてはまだ途上段階です。

一方、STEAM教育の起源であるアメリカでは、初等教育段階から明確にカリキュラムに組み込まれています。

2013年に発表された「STEM教育5ヵ年計画」では、2020年までに初等中等教育段階のSTEM分野教育者を10万人養成。

あわせて高校卒業までにSTEM分野の経験を持つ若者を毎年50%増加させることを目標にしていました。

また、シンガポールやフィンランドといった教育先進国では、STEAM教育が国家レベルの戦略として取り入れられ、教員研修や教材整備も整っています。

世界との違いから、日本のSTEAM教育は今後さらに整備と深化が求められている状況です。

小学校におけるSTEAM教育のメリット

STEAM教育は、知識の習得にとどまらず、子どもの主体性や創造力を育てるうえで有効なアプローチとされています。

ここでは、教育現場で実際に期待されている主な3つのメリットを紹介します。

1. 複数教科を横断して思考力・創造力を育める

STEAM教育では、1つのテーマを複数教科の視点から探究することで、知識同士のつながりを理解し、応用力や創造性を養えます。

ロボットを動かす授業の構成例

要素 関連教科 学習内容例
ロボットの設計 理科・図工 構造、形の工夫、素材の特性
動作制御 算数・技術 条件分岐、数値入力、プログラミング
見た目のデザイン 図工・アート 配色、形状の工夫、見せ方の工夫

 

このように教科横断的に学ぶことで、子どもが「なぜこの知識が必要か」を実感しながら取り組めます。

2. 子どもの主体性・探究心を引き出せる

STEAM教育では正解のない課題に挑戦することで、自ら問いを立て、仮説を検証し、改善していく力が自然と育まれます。

具体的な効果例は以下の通りです。

  • 「うまく動かないのはなぜ?」と考えることで原因分析力が育つ
  • 改善方法を自分で試す中で、試行錯誤を楽しめるようになる
  • 完成した成果物に対して「自分でやり遂げた」という自信がつく

実際に、日本の小学校や一部の世帯でも子どもの好奇心に沿ったテーマを用いてSTEAM授業を実施し、児童の自発的な学びにつなげています。

3. 将来に必要な非認知能力を早期に育成できる

STEAM教育では、テストの点数では測れない「非認知能力(=社会的・情緒的スキル)」が自然と育つ場面が多くあります。

育成される非認知能力の例

能力名 鍛えられる場面
協働力 チームで役割分担してロボットを組み立てる
粘り強さ 試行錯誤の中で失敗を繰り返しながら改善する
創造力 オリジナルの作品やアイデアを表現する
コミュニケーション力 話し合いや発表で自分の意見を共有する

 

これらの力は、将来の仕事や社会生活において極めて重要な基礎スキルであり、早期からの育成が注目されています。

小学校におけるSTEAM教育のデメリット・課題

STEAM教育は21世紀型スキルの育成において注目されている一方で、現場ではまだ導入・定着に向けた課題も多く存在します。

以下では、特に指摘される3つの側面を詳しく解説します。

1. 教員側の指導スキルや教材整備が追いついていない

STEAM教育の中心である「教科横断型」「探究型学習」は、従来の教科教育と比べて高度な指導力が求められます。

しかし、現場では、次のような課題が散見されます。

指導・整備上の課題

  • 教員がプログラミングやロボット教材に不慣れ
  • 教科横断的なカリキュラム設計の経験不足
  • 学校によってICT環境や教材整備の差が大きい
  • 実験・工作系教材の準備負担が大きい

こうした課題により、すべての学校・教員が安定的にSTEAM教育を提供できる体制には至っていません。

2. 評価基準や成果が見えづらい

STEAM教育では、「答えが1つではない」「プロセス重視」の課題が中心となるため、学力テストのような明確な評価が難しいのが現状です。

従来の評価軸 STEAM教育で重視される要素
正解・不正解の明確な判定 試行錯誤・創造性・課題解決プロセス
テストや点数での評価 観察・振り返り・ポートフォリオ評価など
一斉授業での画一的評価 個別の探究内容や成果に基づく柔軟な評価

 

明確な評価基準が整っていないと、保護者や教員間での理解を得るのが難しく、授業の継続性・信頼性にも影響を及ぼします。

3. 保護者や学校内での理解・認知度が低い

STEAM教育は比較的新しい概念であり、学校外においてはまだ十分に浸透していないのが実情です。

よくある誤解・懸念の例

  • 保護者:「遊びの延長では?」「受験に関係あるの?」
  • 教員間:「STEMとSTEAMの違いが曖昧」「すでに教科で対応できているのでは?」
  • 校内:「教科横断型の必要性が伝わりにくい」

理解不足により、せっかくの実践も「特別活動的な取り組み」と捉えられてしまい、教育効果が正当に評価されないケースもあります。

日本の小学校のSTEAM教育の事例

日本全国の小学校でも、STEAM教育を取り入れる動きが広がっています。

特に総合的な学習の時間を活用し、プログラミングやロボット、理科実験やアート表現などを組み合わせた取り組みが行われています。

自治体や大学と連携した先進事例や、地域や学校ごとの工夫が盛り込まれた事例も多く、それぞれの学校で子どもたちの思考力・創造力・協働力を育てる工夫が凝らされています。

ここでは、代表的な5つの小学校のSTEAM教育事例を紹介します。

福岡県|中間市立 中間北小学校の事例

福岡県の中間北小学校では、5年生を対象に総合学習の時間を活用し、ロボット教材「あるくメカトロウィーゴ」を使ったSTEAM教育が行われています。

3〜4人のグループに分かれてロボットの操作を学び、最終的には鉛筆で描いた迷路の上をプログラミングで動かすという実践的な内容です。

論理的な手順設計や、仲間との話し合いを通じた協働作業により、思考力とチームワークを育めます。

福島県|伊達市立 月舘学園小学校の事例

福島県の月舘学園小学校では、4年生を対象に、リモコンの仕組みを題材とした授業が展開されました。

テレビやエアコンなど、子どもたちに身近なリモコンの原理を学び、その後、実際にロボットである「あるくメカトロウィーゴ」に命令を与えて操作するという実践活動が行われています。

生活と技術をつなぐ工夫により、自然な形で技術的思考を育むことができる取り組みです。

兵庫県|兵庫教育大学附属小学校の事例

兵庫教育大学附属小学校では、インテル社の「STEAM Lab」を活用し複数学年で探究型のSTEAM授業が実施されています。

理科実験やロボットの組み立て、芸術表現などを組み合わせたカリキュラム構成が特徴で、大学との連携により教育実践データや研究成果が授業に活かされています。

体系的かつ継続的にSTEAM教育を取り入れている先進事例といえます。

東京都|世田谷区立 烏山小学校の事例

東京都の烏山小学校は、平成30年(令和元年度)より世田谷9年教育研究開発校「STEMスクール」を受託。STEAM教育に積極的に取り組んでいます。

2018年10月10日には、5年生の理科「電流のはたらき」の単元を題材に、STEAM的アプローチを取り入れた授業が行われました。

この授業では、「なるべく大きな音のスピーカーを作るにはどうすればよいのか?」という本質的な問いを設定。

児童たちは紙コップ、エナメル線、磁石などの身近な材料を使って手作りスピーカーを制作しました。

作成にあたっては、コイルの巻き数や直径、磁石の位置・強さ、電流の強さなど、音量に関係するさまざまな要素に着目しながら工夫を重ねました。

東京都|荒川区立第二日暮里小学校の事例

東京都のプログラミング教育推進校である荒川区立第二日暮里小学校では、図画工作の「表現」および「鑑賞」をテーマとしたSTEAM型授業が実践されました。

この授業は、創立110周年の記念行事の一環として「伝えたいことに合わせて『学校からのメッセージ』動画の撮影方法を考えよう」という探究的な問いを軸に展開されました。

児童たちはまず、自分の好きな学校の場所を選び、身近な材料や用具を使ってその魅力を表現する造形活動に取り組みました。

さらに、その作品に対してタブレット端末を活用し、プログラミングで動きを加えたり、自らのナレーションを入れた動画を撮影したりするなど、創造性とICT活用を融合した学習活動を実施しました。

大阪府|関西大学初等部の事例

関西大学初等部では、2021年度・2022年度「未来の教室」実証事業(経済産業省)に採択され、大学附属校ならではの教育リソースを活用し、STEAM教育を全人格的な学びとして実施しています。

プログラミングやロボットだけでなく、アート思考や発表活動も重視。『ごんぎつね』の物語をSTEAM的に再構成するなど、創造力を高める独自のカリキュラムが魅力です。

子どもの表現力や思考力を多角的に育てる教育スタイルは、私立ならではの柔軟性も感じさせます。

小学校のSTEAM教育に関するよくある疑問

小学校でのSTEAM教育に興味がある一方で、「どの教科で行われているのか」「いつから始めるべきか」「家庭で補えるのか」といった疑問を持つ保護者も少なくありません。

ここでは、そうしたよくある質問に対して、わかりやすく整理して解説します。

どの教科の時間にSTEAM教育は行われる?

STEAM教育は、特定の時間割にSTEAMという教科があるわけではありません。

代わりに、「総合的な学習の時間」や「生活科」「理科」「算数」「図工」など、複数の教科をまたいで行われるのが一般的です。

また、学校によっては、自由研究やクラブ活動の時間を使って、STEAM的な学びを展開しているケースもあります。

実施例 内容・特徴
総合的な学習の時間 調べ学習や探究活動の中で、複数教科を横断した課題に取り組む
理科・算数・図工などの教科 実験や図形・設計・工作などを活用し、STEAM的要素を取り入れる
学級活動・自由研究 ロボット製作やプログラミングに挑戦する課外活動の一環として実施

低学年のうちからSTEAM教育は必要?

低学年でも、体験を通じたシンプルな活動を通して、STEAM教育のエッセンスを取り入れることは十分可能です。

むしろ「考える楽しさ」や「ものづくりの喜び」をこの時期に経験しておくことが、将来的な思考力・探究力の土台づくりに役立ちます。

たとえば、植物の観察記録や、ダンボール工作、簡単なロボット制御などを行うことで、自然にSTEAM的な視点を育むことができます。

低学年に適したSTEAM活動例 内容の例
観察・記録 アサガオの成長記録、昆虫の観察日記など
工作・モノづくり 紙コップでつくる空気砲、ダンボール工作、レゴ遊びなど
初歩的なプログラミング体験 タブレットアプリを使ったキャラクター操作(ビジュアル型)

学校以外で補完できる方法はある?

学校だけでなく、自宅や民間の教育サービスでもSTEAM的な学びを補うことは可能です。

近年では、自宅用のロボット教材やプログラミングキット、アプリ学習なども充実しており、遊びの延長として取り入れる家庭も増えています。

また、STEAM教育に特化したスクールや、オンラインでのレッスンを通じて、学校の授業ではカバーしきれない部分を強化できます。

補完方法 特徴
家庭での教材活用 ロボット教材や科学キットなどを使って親子で学べる
STEAMスクール プログラミング・ロボット・理科実験など専門的なカリキュラムが用意されている
オンライン教材・動画サービス タブレットやPCを活用して、自宅でいつでも学習が可能

小学校におけるSTEAM教育は今後ますます重要に

変化の激しいこれからの社会では、単なる知識の詰め込みではなく、自ら問いを立てて解決策を考え抜く力が求められます。

STEAM教育は、そうした時代に必要な「思考力」「創造力」「表現力」「協働力」などを育む土台となる教育として注目されており、今後の初等教育においてますます重要な位置づけとなっていくでしょう。

文部科学省も教育振興基本計画で「STEAM教育の充実」を明記しており、全国の小学校で探究型・横断型の学びが進められています。

今後は学校教育と家庭学習が連携しながら、より実践的で深いSTEAM教育を子どもたちに届けることが求められます。

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